2018年夏巡業第5弾は2018年8月2日(木)、高知県立高知若草養護学校でのコミュニケーションツール活用講習会です。
テーマは【肢体不自由教育におけるAssistive Technologyの活用について】

文部科学省は「特別支援教育に関する教職員等の資質向上」を図るために様々な事業を展開しています。その一つとして「手話等のコミュニケーションツールを活用した教職員等の資質向上に関する講習会」を実施してくれる研究機関等を公募したところ、平成30年度は愛媛大学教育学部が採択されました。
そこで、愛媛大学教育学部では、四国エリアの特別支援学校や特別支援学級に向けて「障害のある子どもたちの日常生活や学習行動をサポートする様々な支援機器(コミュニケーションツール)の活用を目的とした講習会を開きませんか?講習会を開催したい日時を決めて希望する講師がいれば申し込んでください。」といった案内を出されたところ、Samを指名してくださったのが、今回の高知県立高知若草養護学校さんと徳島県立ひのみね支援学校さん(8月23日に伺います)です。
講演タイトル
コミュニケーションツール講習会となっていますが、「何のためにコミュニケーションツールを使うのか」という目的を明確にしておかなければ、「ツールに子どもを合わせてしまう」という本末転倒な結果になってしまうと考えて、まずはそのお話から。

肢体不自由児が抱えている学習上または生活上の困難さの例を引き合いに出しながら、私たち教員が目指すところは何なのかを考えていただきました。
毎回お話しする「肢体不自由教育とは...肢体不自由児はカラダを動かす上での不自由さはありますが、誰しも「◯◯したい」というココロを持っています。私たち教員は、子どもたちが持っている「◯◯したい」というココロを不自由にさせない教育をしなければならないのではないでしょうか」という言葉には皆さん納得しておられたようです。

その「◯◯したい」というココロを不自由にさせない手段の一つとして、Assistive Technologyを活用しましょうという流れで話を進めていきました。
講演の様子01
講演の様子03
現任校における活用事例(VOCA、iPad、視線入力、Simple Technology)を動画で紹介するとともに、福岡の特別支援学校に在籍しているRさんにビデオ通話(Facebookメッセンジャーによるビデオ通話機能を利用しました)でライブ出演してもらいました。
Rさんは、日常の会話はレッツ・チャットを外付けスイッチで使い、学習にはiPadをスイッチコントロールで使ったり、WindowsパソコンとTobii Eye Tracker 4Cで視線入力したり…と、Assistive Technologyを上手に活用している女の子です。
180727講演ゲストHRさん
お母様にご協力いただき、どのようなICT機器を使っておられるのかを紹介していただいた後、本人による視線入力で学習している様子の実演!
アプリや視線入力を見事に使いこなすRさんの姿に、会場からは大きな歓声と拍手が送られました。

Assistive Technologyを活用することによって、重度・重複障害と言われている子どもたちの可能性や私たち教員が彼らを評価する視点が変わっていくことを理解していただけたようです。
後半は、新しいテクノロジー(OAK CamOpen SesameOriHime、視線で動かす電動車いす、スマートスピーカー、デジタル教科書)を紹介し、Assistive Technologyの活用が自立や社会参加に寄与する可能性についてアメリカの事例をもとに紹介しました。
当初予定していた時間を30分ほどオーバーしてしまい、質疑応答の時間が少なくなりましたが、閉会後の個別相談で多くの先生方の疑問に応えさせていただきました。

ありがたいことに「もっと知りたいことがあるので、冬休みにも来てもらえませんか?」という言葉をいただきました。
ひょっとしたら、またお伺いすることになるかもしれませんね。