2018年12月25日(火)の午後高知県立高知若草養護学校の職員研修会に呼んでいただきました。
午前中の土佐希望の家分校での研修会とのダブルヘッダーです。
高知若草養護入口
高知若草養護研修会場
高知県立高知若草養護学校には、2018年8月2日にもコミュニケーションツール活用講習会でお伺いさせていただきました。
前回は自主研修会の要素が強く、全職員が対象ではありませんでしたが、今回は全職員対象の研修会。
また、午前中に伺った土佐希望の家分校の教員も参加されていました。

今回は、事例検討に続いてSamの講演というスケジュール。
高知若草養護研修会日程
高知若草養護研修内容
前半の事例検討では、アテトーゼ型脳性まひによる四肢まひと不随意運動が顕著な子どもさんへの取組が紹介されました。
一般的な事例検討というと①事例の紹介、②質疑応答、③講師による助言、というパターンが多いと思うのですが、今回は①事例の紹介、②参加者個人で「自分だったら、どのように取り組むか」を考える、③近くに座っている人とディスカッションして「私たちのグループだったら、どのように取り組むか」という意見をまとめて発表する、④各グループの意見を要約して書き出し意見交換する、という流れでした。
高知若草養護事例対象児の実態
企画された先生が考案されたのでしょうか、参加者がそれぞれ考え、意見をまとめ、多くのアイディアを引き出すというわけですから、参加者は受け身にならず能動的に研修するというわけです。
そのやり方に感心しているうちにコメントを求められ、そのまま講演に移っていきました。

対象児の実態は以下のとおり(準備していただいた資料から抜粋)


◯ 周囲の人の会話を聞いて、だいたい理解している。

◯ YES/NOを「うん」「はい」「ちがう」 で返答する他、「やったー」「やめて」「いや」等の発語で意思を伝えることができる。

◯ 単語を発することで意思を伝えることができるが、不明瞭なため周囲の人が聞き取れないことが多い。それは、日頃一緒に活動している教員や保護者でも同様な場面が多々ある。

◯ 昨年1月からひらがな文字の学習に取り組み始め、読める文字が10文字程度ある。

◯ 文字を組み合わせて単語を作ることは難しい。

◯ 3までの数を理解しつつある。

◯ 絵カードは内容を理解し、単語を聞いて選択できるものが100程度ある。

このような実態の子どもには「シンボルや文字による意思伝達手段をなんとか身につけさせたい」と考えるのですが、その入力がうまく適合しないと失敗することになり、ひいてはコミュニケーション意欲の低下に繋がります。

そこで、担当教員は視線入力の利用に取り組まれたそうです。
事例の動画を見せていただきましたが、校内で学習指導に利用できるWindowsパソコンがタブレット型だったため、ディスプレイが小さすぎることと対象児の不随意運動があるためにキャリブレーションがうまく取れないことがあるとのこと。
そこで、①大きめのディスプレイを利用すること、②パソッテルのような固定具を準備すること、③PTやOTと連携して楽な姿勢をとった状況で視線入力に取り組むこと、の3点を提案させていただきました。

また、パソコンを利用した視線入力だけでなく(入浴中など水がかかると使えませんし、太陽光の関係で屋外では使えません)、対象児の得意な動作に反応するスイッチを使って、VOCAやタブレットのVOCAアプリを利用したり、コミュニケーションカード&視線ボードで意思を確認するという方法を提案させていただきました。

幸い、学校長が研修会に参加されていましたので、①と②は予算化できそうとのことですし、PTが配置されている学校なので、そのPTにサポートしてもらえるとのことで、今後の展開に期待できそうです。

その後の講演では、①重度・重複障害と評価(診断)される子どもたちは失敗体験が受動的になりがちで、学習性無力感を感じやすくなり、周囲の人は「◯◯デキナイ」と評価しがち、②デキルことを活かすという発想の大切さ、②意思伝達手段の提供と併せて「お得なこと」をたくさん経験できるようにして意欲の向上を図ること、③アメリカにおける自立と社会参加の考え方、についてお話しさせていただきました。
重度・重複障害児の実態
発想の転換が必要
お得なことが意欲の向上につながる
社会参加とは
夏の研修会後に「また来てください」と言われましたが、今回も「来年もまた来てください」という嬉しい言葉をいただきました。

ありがたいことです。
実現したら嬉しいですね。