現任校の子どもたちが使っている視線入力のスキルがどの程度あるのか...
それを評価するツールが欲しい...

とリクエストしたところ、島根大学工学部総合理工学研究科助教の伊藤史人さんが評価ツールとしてのWindows用アプリを開発してくれました。

その名もGaze Test Tool
ランキング表示画面
2019年3月2日にα版(試作の試作)としてリリースされたものが、同年5月1日にβ版(試作)にアップデートされました。
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【アップデート】視線評価ツールがα版からβ版になりました


α版(試作の試作)からβ版(試作)になり,主に以下の機能が追加・修正になりました。

・ランキング表示を追加

・視線評価の画面範囲を変更できる

・文字入力評価の文字数を変更できる

・総合成績算出時の各スキル成績の重み付けの変更

・その他バグ修正

Gaze Test Toolの画面
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Gaze Test Toolの画面は、見つめるターゲットが最大15個(横5列✕縦3行)表示され、ターゲットを1秒間見続ける(=注視する)と消えるようになり、すべてのターゲットを消すとゲームが終了します。

スタート画面の右上に表示される設定(歯車マーク)では,画面を見る範囲や文字入力の総文字数を変更できるようになっています。
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ランキング表示画面
ゲームを終えた後、キーボードの右矢印キーを押すと評価画面が表示されます。
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Gaze Test Toolの評価画面
評価項目は以下のとおりになっています。

①Linearity(=直線性)→ターゲットに向かって(寄り道をすることなく)まっすぐ目を動かしたかどうかが測定できます。

②Stability(=安定性)→ターゲットの中心を見ているときのふらつき(眼振がある場合、ふらつくことがあるので)加減が測定できます。

③Accuracy(=正確さ)→四重の円になっているターゲットの中で1秒間注視するとターゲットが消えるようになっていますが、注視を開始した位置からターゲット中心までのズレが測定できます。中心に近い位置で注視を開始した方が高得点となります。

④Time(=所要時間)→ゲームの開始から終了(最後のターゲットが消えるまで)までに要した時間が秒で測定されます。

⑤Distance(=距離)→ゲームの開始から終了(最後のターゲットが消えるまで)までに動かした視線の距離が測定されます。

⑥Order Of Gaze(=視線を動かした順番)→最初に消したターゲットから最後に消したターゲットまで、どの順番で消していったかの軌跡が測定されます。

伊藤史人さんのブログ記事には「知的な理解力が未発達な方の場合、ターゲットを注視することが難しいかもしれません」と書かれていますが、現任校の中学部に在籍するアテトーゼ型脳性まひの女子生徒に試してもらいました。
Gaze Test Toolを試している子ども
対象児は声を出すことはできますが、発話および筆記はできません。

音声言語で尋ねられたことに対して、YES/NOは「右手を挙げるとYES」「無表情であればNO」といった表出手段があると我々は解釈していますが、「どちらでもない」という時も無表情なので判断しにくいことがあります。

彼女の意思を知るために、文字を書いた絵カードを提示してその中から視線で選ぶというコミュニケーション方法を我々はとっています。

昨年度(2018年度)から視線追跡装置Tobii Eye Tracker 4Cを利用した視線入力でEye MoT 2DEye MoT 3Dで遊んだり、視線マウスアプリmiyasuku EyeCon LTと併用してSOUNOS VALKAで音楽を演奏したりしてきました。

現任校では、Tobii Eye Tracker 4Cでキャリブレーションをとることができる唯一の子どもさんなので、視線入力評価ツールGaze Test Toolが使えるのではないかと思って試してもらうようにしました。

その様子をYouTubeにアップしました。

試してもらった結果、Stability(=安定性)とAccuracy(=正確さ)の評価が高いことが分かりました。

また、この子が我々が音声言語で指示していることの意味を理解していることやゲームのルールを理解していることが改めて分かるという結果も得られました。

視線入力に取り組んでいる支援者の皆さんは、一度試してみると良いと思います。