2018年8月16日(木曜日)の午後、大阪支援教育研究会(略称:大支援研)主催のICT活用プロジェクト夏期講座で講演させていただきました。
講演タイトルはデキルことを活かすテクノロジー〜視線入力もあるよです。
大支援研講座1日目の内容
講演で話した内容の項立ては、以下のとおりです。
1 肢体不自由教育で大切にしたいこと
2 肢体不自由教育でAssistive Technologyを効果的に活用するためには
3 AT(Assistive Technology)が将来の暮らし(自立・社会参加)に寄与する可能性

1は、今夏の巡業で毎回お話ししている「肢体不自由教育とは...肢体不自由児はカラダを動かす上での不自由さはありますが、誰しも「◯◯したい」というココロを持っています。私たち教員は、子どもたちが持っている「◯◯したい」というココロを不自由にさせない教育をしなければならないのではないでしょうか」ということについて、肢体不自由児が抱えている学習上または生活上の困難さの例を引き合いに出しながら、私たち教員が目指すところは何なのかについて問題提起させていただきました。
そして、その「◯◯したい」というココロを不自由にさせない手段の一つとして、Assistive Technologyの活用があるという話です。

2は、現任校における活用事例(VOCAで挨拶や係活動、iPadで会話や係活動、視線入力でPCゲームをしながら因果関係の理解を図る学習、Simple Technologyを利用した遊びや係活動)を動画で紹介しました。
実践紹介
関西では視線入力があまり導入されていないということを聞いていましたので、試したことがないという方を指名させていただき、伊藤史人さんプロデュースによる入力練習アプリEyeMoT 3D_00【風船割り】を体験していただきました。
視線入力を試してもらう
振動フィードバックの有無で「やった感」の違いがあることも体験してもらいました(女性が持っている茶色のモノは振動をフィードバックするための振動クッション)。
視線入力&振動フィードバック
また、重度・重複障害と言われる子どもたちの音楽や図工・美術といった授業などでよく見られるゴッドハンドを解消する手立ての一つとしてのAssistive Technologyの活用についても考えていただきました。
ゴッドハンド
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伊藤史人さんをモデルにゴッドハンド

3では、新しいテクノロジー(どこでもスイッチOAK Cam、Android向けFace TrackingアプリSesame Phone、分身ロボットOriHime、視線で動かす電動車いす、スマートスピーカー、デジタル教科書)を紹介するとともに、Assistive Technologyの活用が自立や社会参加に寄与する可能性について海外の事例を紹介しながら考えていただきました。
Samは1999年に1人でアメリカに渡り、学校やグループホームなどを訪問してAssistive Technologyを活用している場面を見てきました。
彼の地で出会った教育関係者や研究者が口々に言っていた言葉が「Assistive Technologyを活用してInter-dependentな生き方」「障害があるために完全な社会参加が難しい場合は部分的な社会参加Partial Participationで良い」という考え方でした。

とかく、日本では何ものにも頼らず自分一人でやるという自立Independentが良しとされ、マンパワーや機器・道具に依存するDependentは悪いことのように思われてきました。
でも、遠くに出かけるときには自動車を使ったり、近くや遠くが見えづらくなったらメガネをかけたりするように、我々は時と場合に応じて機器・道具を使い分けながら生きているはずです。
自立か依存かではなく、TPOに応じて使い分けていくというのがInter-dependentという考え方です。

また、社会参加とは「自分の属するCommunity(学級・学年・学校・家庭・ご近所さんといった単位もCommunity)に貢献すること」であり「障害があるために1人で作業ができなければ、各自がそれぞれの能力を出し合い、役割分担しながら作業を遂行すること」であると教えられました。
それを具現化するにはAssistive Technologyの活用が必須である、とアメリカ人たちは話してくれました。
なんでもかんでもアメリカが良いというわけではありませんが、こういう考え方は大切だと思っていますし、日本の教育現場でも参考になると思います。
社会参加とは
Samの講演の後は、金森克浩さんの司会で「デキルを活かすために何が「できる」のか?を考える」というテーマでパネルディスカッション。
パネラーは、行政経験者として丹羽登さん、工学の研究者として伊藤史人さん、当事者の保護者として牧千琴さん、福祉機器業者としてケアショップハルの酒匂泰智さん、特別支援教育教員としてSamの5人。
ディスカッションの内容は金森克浩さんのブログで詳しく紹介してあります。
リンク先を貼っておきますので、是非ご覧ください。
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http://magicaltoybox.org/kinta/2018/08/17/17441

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左から金森克浩さん、Sam、伊藤史人さん

来たる9月1日(土曜日)、このメンバーに高松崇さんも加わってパネルディスカッションを行います。
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https://www.kokuchpro.com/event/atm56/
180901ATM56
興味のある方は、是非ご参加ください。