2016年4月施行の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称、「障害者差別解消法」)により、一人ひとりの困りごとに合わせた【合理的配慮】の提供が行政・事業者に義務化されました。

【合理的配慮】とは、障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。

Samは仕事がら小中学校からの要請によって、通常の学級や特別支援学級に在籍している児童生徒のうち、発達障害や肢体不自由があるために読み書きで困っている児童生徒へのICT活用に関する相談を受け、対応することがあります。

数年前から特別支援学級や通級指導教室の教員向けに研修を依頼され、具体的な活用方法を紹介してきましたので、そういう教員には理解が広まってきていますが、通常の学級を担当している教員への理解が進んでいないのが現状です。
相談・支援の依頼を受けた通常の学級に訪問し、該当する児童生徒の学習場面を参観し、持参したICT機器を試してもらうと、ほとんどの児童生徒が「これがあれば勉強しやすくなる」と喜んでくれるのですが、授業への導入が進みません。

その理由として、通常の学級を担当している教員が「〇〇さんだけ特別扱いはできない」「他の子に対して不公平になる」と考えているからなのです。

なんとか理解をしてもらいたいと日々考えているのですが、先日Facebook経由で発達障害のある小中高生向け 放課後等デイサービスTEENSさんが【図表でわかる!】発達障害 × 合理的配慮 |「タブレットの利用はズルい」? 合理的配慮を”不平等”だと感じる人へという記事を書かれていることを知りました。

以下、TEENSさんの許諾を得ましたので、その内容を引用します。



合理的配慮という考え方は、日本では2016年4月に「障害者差別解消法」が施行されたことにより急速に広まりました。

しかし、今でも「合理的配慮は不平等である」と考える人は残念ながらたくさんいます。

そして、学校の先生だったり職場の上司だったり…本来であれば合理的配慮について相談したい相手が、そういった考えであるという状況も往々にしてあるでしょう。

例えば、ディスレクシア(読み書き障害)のある子のためのタブレット使用について。現在、たくさんの活用事例が報告されている一方で、「●●さんだけ特別扱いはできない」「他の子に対して不公平になる」といった理由をあげながら学校での使用が認められない例も少なくありません。

では、なぜこのような解釈のズレが生じるのでしょうか?

その理由のひとつに、合理的配慮を行うことで「結果が左右される」 = 「有利な状態になる」、という誤解が生じていることがあげられるでしょう。

合理的配慮とは、同じ土俵でチャレンジするためのサポートの形であり、えこひいきをしたりルールを変えることが趣旨ではありません。

例えば「野球の試合を観て感想を言いましょう」という課題がでたとします。

この時試されるのは「試合状況を把握した上で自分の考えを示せるか」ということです。

そんな中、身長の関係で試合を観ることができない子がいたとしましょう。

その子が感想を言えなかった時に「この子は試合状況を把握したり、自分の考えたことを示せない」と評価してしまってよいでしょうか?

この子ができなかったのはあくまで試合を観ることだけで、課題で評価したいことの本質とは何ら関係がありません。

そのため、きっとこの課題をだした先生も「台に乗って試合を観られるようにしましょう」と伝えるのではないでしょうか。

発達障害の子どもたちへの合理的配慮も、これと全く同じことが言えます。

例えば、ディスレクシア(読み書き障害)の子に対して、「試合を観て感想を書きましょう」という課題がでたとします。

ここでも試したいのは、変わらず「試合状況を把握した上で自分の考えを示せるか」ということです。

このディスレクシアの子は、試合自体を観ることも感想を話すこともできるかもできます。

しかし、文字を書く、ということができないばかりに課題をこなせなかったとしたら、「この子は試合状況を把握したり、自分の考えたことを示せない」と評価することが妥当でしょうか?

この時に、「文字は書けないからパソコンを使って感想をタイピングします」と言ったとします。

これは決して本人の能力が底上げされるわけでも、えこひいきしているわけでもなく、むしろ本来試したい実力を発揮するための手立てだということはご理解いただけると思います。

身長とは異なり、発達障害の子は脳機能に違いから困り感が生じているためその原因を目で見ることができません。

そのため、理解されづらいという側面があります。

一番左の背の低いお子さんが、試合を観るために木箱を2つ使うのをズルいと言う人や木箱を使えば身長が伸びなくなる、と言う人はきっといないでしょう。

同じように、ディスレクシアの子のタブレット使用に対する「●●さんだけ特別扱いはできない」「タブレットを使用しては書字の苦手さが改善できない」という主張には正当性がないことは明らかです。

という解説文と共に載っていたイラストがこれです!
 ↓ ↓ ↓
合理的配慮を説明するイラスト
このイラストは、IISC(interactioninstitute.org / madewithangus.com)のイラストを参考に作成されたそうですが、とても分かりやすいですね。
IISC_EqualityEquity
こういう理解が、読み書きに困難さのある子どもたちの学びにくさを軽減することに繋がってほしいものです。

※当ブログに記事の掲載を承認していただいたTEENSさんに感謝します。