マジカルトイボックスイベントをはじめAssistive Technologyに関するセミナーや講演会などでお会いする機会が多いおおきなきさんが、ブログおおきなき交流広場~言の葉(ことのは)~を書いておられます。

その中のエントリー27歳からの視線入力への挑戦ーその3ーにたいへん興味深い内容が書かれていました。
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27歳からの視線入力への挑戦ーその3ーブログ記事の主人公である雅也さんのお母様からおおきなきさんに届いたメールに次のようなことが書いてありました。


皮質盲と言われていましたが、可能性にかけてみました。

視線センサーとの出会いで、私は文字通り盲目的に画面を見せ始めたわけですが、驚くことに雅也の眼球運動が改善しました。

健康用語WEB事典によれば、皮質盲とは以下のように書いてあります。


両側の後頭葉の損傷によって、目で見えているものを認識できなくなる異常。

脳の異常による失明。

ざっくり言うと、眼球もあり網膜に映像が映っているにも関わらず、脳の後頭葉に損傷があるために、その像を視覚中枢で解析できないために視覚認知できていない状態というわけです。

以前もお伝えしましたが、Samの勤務校にも「この子は見えていない」と診断されている脳性疾患の子どもたち(いわゆる重症心身障害とか重度・重複障害と診断・評価されています)が何名もいます。

そういう子どもたちでも、母親の声やある音楽が聞こえると音源の方に顔を向けることがあり、その対象に目を向けているように見えるのです。

そこで、視線入力を試してみる!
それも、週に何回も...何ヶ月にもわたって...

すると、眼球の動きに変化が現れる子どもがいるのです。
A児が視線入力に取り組み始めた頃の視線の履歴
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視線入力に取り組み始めた頃のA児の視線の履歴

2年後に視線入力で描いたA児の絵
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A児が視線入力に取り組んで2年後に描いた絵
あきらかに眼球運動が向上していることが分かると思います。

上の事例のA児は、いわゆる重症心身障害とか重度・重複障害と診断・評価されていて、医者から「この子は見えていない」と診断されている子どもさんです。

最近の脳科学研究では、「脳には可塑性がある」と言われています。

対象児にとってつまらないモノを見せたって見たりしないと思いますが、その子にとって「お得なモノ」であれば見るのではないでしょうか?

「お得なモノ」を見続けることで、損傷していた脳の周辺細胞が活性化され、通常の神経回路に代わる新しい回路が形成されて視覚認知機能が向上する可能性は0ではないと思います。

2016年2月当時27歳だった雅也さんのお母様からおおきなきさんに届いたメールには、次のようなことが書いてあったそうです。


私は、小さい頃から、どんなに障害が重くても自分の感情や意思を表現できる人に育ってほしいという思いで子育てをしてきました。

息子は自分の感情を表出できるようになっただけでなく、27歳の今になってようやく、してほしいこと、やりたいことなどを訴えてくるようになりました。

しかし、発語できないために自分の思いを伝えきれていないのだと思います。

ストレスをためている様子が伺えます。

そこで情報をたぐって、OAK Pro やTobii EyeX Controller(後継機はTobii Eye Tracker 4C)を知り、購入してみました。

メールをきっかけとして、おおきなきさんがサポートを始めるようになったそうですが、お母様自身が勉強され、日常生活用具給付制度でトビーPCEyeえくすぷろあを購入し、センサリーアイFX等のアプリを揃えていかれたそうです。

また、ローコストの視線入力装置にも着目され、Tobii Eye Traker 4Cも揃えるとともに、島根大学の伊藤史人さんが開発されたEyeMoT 2DEyeMoT 3Dも有効に活用されたそうです。

雅也さんのお母様のように学校やリハだけに頼るのではなく、我が子の可能性を信じて自分で勉強し、必要であれば機器類を揃え、日々コツコツと取り組んでおられる障害児の家族がSamの周りにも増えているように感じています。

週に1回程度の授業でICT機器を活用したとしても、機器の位置やアプリの選定といったフィッティングを試しているうちに授業時間の半分ぐらいが過ぎてしまい、気持ちがのってきた頃に授業が終わっていまう...
という繰り返しでは、力はつかないように思います。

「継続は力なり」という言葉がありますが、30分でも良いので毎日継続して取り組むことで伸びていく子どもは少なくないと思います。

今夏、いわゆる重症心身障害とか重度・重複障害と診断・評価されている子どもの家族向けのセミナーに招いていただいています。

そのセミナーで、この話もしてみたいと思っています。

※このブログ記事を書くにあたっては、おおきなきさんからの許諾を得ています。