重度・重複障害(医療や福祉の分野では重症心身障害と呼ばれています)と評価されがちな方々の中には、外界からの刺激や環境の変化に対する反応が分かりづらい方がおられます。
Samが教員として在職していた肢体不自由特別支援学校には、反応が分かりづらい子どもたちが多く在籍していました。
その子たちへの教育を行う際、学級担任など子どもを担当する教員が、まず行うのが実態把握です。
「この子は何が好きなんだろう?」「この子はどんなことができるんだろう?」といったことなどを手を変え品を変え試してみて、その反応を記録し、多角的に分析して、学習課題を見つけ、継続して指導・支援を行っていきます。
その評価は多くが観察です。
授業中における全身の状態を録画しておいて後から視聴したり、202年4月5日のブログiDevicesアプリiOAKがアップデートされ、エアスイッチ機能が使えるようになりましたで紹介したiOAKというiDevices用アプリで身体の動きを可視化したり、といった手法を使う学校も少なくないと思います。
iOAKアプリアイコン
iOAKでは、対象者の身体の動きをヒートマップで表示するモーションヒストリーという機能がありますが、てんかんによる突然の発作や咳やくしゃみによる動きも表示されてしまいます。
そこで、例えば、心拍数や呼吸数、血中酸素飽和濃度(=SpO2)、唾液アミラーゼ活性などが計測できるような仕組みはないものか...と現役時代には思っていたものです。

最近では、唾液アミラーゼ測定器がありますし、スマートウォッチで心拍数、呼吸数、SpO2が計測できるようになってきていますので、子どもたちの反応を数値で表すことが可能になりました。
ただし、これらは「どういう刺激を与えた時に反応が変化したか」がイマイチ分からないのです。
そんな折、Tech系情報を紹介しているGIZMODOの2021年12月7日付け記事に興味深いアプリが紹介されていました。
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年齢も文系理系も関係ない。熊本県立大学の飯村教授が語る「テクノロジーとの向き合いかた」
このWeb記事で紹介されていたアプリがHeartRecorderです。
HeartRecorderアプリアイコン
HeartRecorderの概要を以下に引用します。
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私たちの心拍は、運動したり、感情の変化が起こると、早くなったり、ゆるやかになったりします。
「HeartRecorder」は、心拍数の変動と、ビデオ映像とを、同時にトラッキングすることで、どのような要素が心拍数に影響を及ぼすかを理解し、日々の活動を振り返ることのできるアプリケーションです。
この機能を使って、意思の疎通が難しい方のコミュニケーションも支援できます。

「HeartRecorder」はiPhoneとApple Watchとが連携することで機能します。

iPhoneは、Apple Watchで計測した心拍数を、HealthKitを介して取得します。
並行して、Apple Watchをつけている方の振る舞いなどの様子をビデオ映像として記録します。

iPhoneで録画を開始すると、それがトリガーとなり、Apple Watchでの心拍数の計測及び、HealthKitからの心拍数取得が自動で開始されます。
取得された心拍数は、録画中のビデオ映像と合わせて、iPhoneの画面にリアルタイムで表示され、アプリの利用者が確認することができます。

コミュニケーションが難しい方の心拍数を把握する場合、当事者にApple Watchをつけてもらい、保護者、介護者、教師がiPhoneで録画を開始します。

録画終了後は、Apple Watchでの心拍数の取得が自動で終了し、録画したビデオ映像と心拍数のデータが、iPhoneに保存されます。

保存データには、アプリの利用者が任意の名前をつけることができます。
また、データは、本アプリに搭載したカレンダーに基づいて管理されます。
HeartRecorderスクリーンショット
このアプリを使えば、提示された刺激に対する全体像を動画として記録すると共に、心拍数もリアルタイムで記録できるというわけです。
すべてのニーズを満たすわけではありませんが、刺激に対する反応を可視化することができそうですね。

試しに、AppleWatch(WatchOS8.1)とiPhone X(iOS15.1)にHeartRecorderアプリをインストールして使ってみましたが、上記のような結果がサクッと表示されました。
※iOS15.1のiPhone SE(第2世代)では、設定が最後まで進まず検証できませんでしたが...。

GIZMODOの記事では、「特別支援学校教諭と打ち合わせをして開発した」という意味のことが書かれてありましたので、Facebookで検索してみたところ、埼玉県立の肢体不自由特別支援学校の教諭からのリクエストに応える形でできあがったアプリのようです。
アプリ開発をプロデュースした飯村 伊智郎さんは、公立大学法人熊本県立大学総合管理学部の教授とのこと...
熊本高等専門学校の関係者としては、一度お会いしてみたいものです。