2022年7月4日(月曜日)、6月21日(月曜日)に続いてA特別支援学校でのe-AT活用に関するコンサルテーションに行ってきました。
当日は、知的障害教育部門の高校生1名と中学部1名、肢体不自由教育部門の小学生1名(通学学級)と中学生1名(訪問学級)の子どもたちのe-AT活用についての相談で、その内容は以下のようなことがらでした。
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①知的障害教育部門の高校生Bくん〜GIGAスクール構想で配備されたiPadをどのように使えば良いですか?
②知的障害教育部門の中学生Cさん〜GIGAスクール構想で配備されたiPadをどのように使えば良いですか?
③肢体不自由教育部門(通学学級)の小学生Dくん〜視線入力でキャリブレーションがうまく取れないのでコツが知りたい
④肢体不自由教育部門(訪問学級)の中学生Eさん〜視線入力でPowerPointのスライド発表を見てほしい(相談というよりもこれまでの取組の成果を見てほしいという依頼です)

備忘録として、また、該当校の皆さんに振り返っていただくため3回に分けて書いてみます。
まずは、①知的障害教育部門の高校生Bくん〜GIGAスクール構想で配備されたiPadをどのように使えば良いですか?という相談について...

高等部3年生のBくんは、産業現場等における実習(通称:現場実習)を終えて通常の学校での授業に戻ってたばかりだそうです。
特別支援学校の高等部のことをご存知の方はお分かりかと思いますが、学習の一環として年に数回数日間(なかには数週間に渡る場合もあります)学校を離れて、企業や官公庁、福祉系事業所などに通勤して仕事や日中活動を体験させてもらう学習があります。
そして、現場実習が終わると報告会として、高等部の生徒および職員(場合によっては保護者も参加します)を前に「どのような仕事や活動に取り組んだか」「成果と課題」「今後取り組んでいきたいこと」などを発表する機会が設けられます。
当日の午後が、ちょうどその報告会で、事前に書いた原稿をクラスのみんなに発表して報告会の練習をするという授業にお邪魔しました。
学級で発表練習をする高校生
Bくんは担任教師と一緒に考えた原稿を読むのですが、構音に困難さがある上に人前に出るテレがあるのでしょうか、周囲の人たちが聞き取りやすい音量で読むことはできていませんでした。
担任教師は「GIGAスクール構想で配備されたiPadを使って、Bくんの意思が周囲の人に分かりやすく伝えるための方法を知りたい」という相談でしたので、Bくんが発表する様子を見て、その理由がよく分かりました。
Bくんが書いた原稿はコチラです。
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緑色マーカーの上を鉛筆でなぞった文字
担任教師によると、原稿を考える時、現場実習の時に撮影しておいた写真をBくんに見せながら「何をしたのか」を思い出させ、その時の気持をジェスチャや言葉で表現してもらったそうです。
その内容を文字として書くことは難しいので、担任教師が下書きを緑色のラインマーカーで書き、その上をBくんが鉛筆でなぞって仕上げたそうです。

ほんの20分ほどしか見ていませんので、正しく評価できたかどうかは分かりませんが...
高校3年生のBくんにとって、ひらがな文字の意味がまだよく理解できていない上に独力で文字を書くことは時間がもったいない気がしました。
また、担任教師が文章を読んだ後に、同じ文章をBくんが話すというやり方だったので、人前に出てうまくしゃべれない状況でした。
現場実習先の担当者も彼の発話を含むコミュニケーション方法に慣れるまで二週間近くかかったそうです。
あと半年ほどで卒業し、就労移行支援事業所などを利用することが予想されますが、「文字が分かっていない」「うまくしゃべれない」と評価されることはBくんにとってプラスにはならないと思います。
支援者から低い評価を受けることは、Bくんへの関わり方にも影響が出るでしょうし、Bくんの自尊感情を下げることに繋がるのではないかという心配も出てきます。

そこで、DropTapのようなVOCAアプリを使って、本人が話したいシンボルや写真と音声を準備し、その中から選んで文章化して自己表現するような練習をしていくことの方が短い時間で効果が上がるのではないかというアドバイスをさせてもらいました。
DropTapのコンテンツ例
また、iPadをいつも持っておくことは現実的ではないので、できればスマートフォンサイズのデバイス(SIM無しiPhoneやiPod touch)を身につけておいて、必要な時にポケットから取り出して使うような工夫ができると良いでしょうね。
そのためには保護者・家族の協力が必要ですし、納得してもらうためには使っている様子を動画で見てもらうのが効果的ではないかと思います。

文字を書くこと、周囲の人が聞き取りやすい声で発話すること...
とても大切な意思伝達方法ですが、その練習を個別に行うことは難しいように思いました。
8人の生徒が在籍しているクラスで、担任教師は3人。
授業中、1人の生徒が突然泣き出し、その泣き声に2人の生徒がパニックを起こしてしまい、発表練習が中断する場面もありましたしね。
うまく学習時間と学習内容の折り合いをつけることができれば良いのですが...

今日のところは、ここまで...