2023年10月13日(金曜日)福岡県立B特別支援学校に今年度2回目のe-AT活用サポートに行ってきましたので、その備忘録として数回に分けて書いていきます。
なお、B特別支援学校へのサポートは、福岡県教育委員会の外部専門家活用事業で経費が賄われています。
B特別支援学校の校門
今回は肢体不自由教育部門に在籍している中学1年生1名と高校2年生1名と高校3年生1名の計3名の担当教師および本人からの相談でした。
まずは、中学1年生のSくんのケースです。
Sくんは発話による意思の表出は難しいのですが、聞こえに問題はなく、コミュニケーションシンボルの意味は理解しているそうです。
小学生の頃からカード化したコミュニケーションシンボルを使って指差しして意思を伝えてきているというのえ、そのツールや使っている様子を見せてもらいました。
机上のコミュニケーションカード
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机に貼ったコミュニケーションシンボル(Sくんは指差しして使っているそうです)
使い方マニュアル
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Sくんが小学生の頃から使っているコミュニケーションボードと使い方マニュアル(旧担任教師が作成したものだそうです)
コミュニケーションブック
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カテゴリーごとにタグを付けて電話帳並みに厚いコミュニケーションブック

担当のN先生からの相談は「コミュニケーションブックが厚くなりすぎて、目的のページをめくるのに時間がかかってしまい、本人ももどかしく感じているようです。GIGAスクール構想で配備されたiPadがありますのでVOCAアプリDropTapを使う練習をしています。ところが、画面をタップする際、人差し指が震えてしまってアプリが切り替わってしまったり誤入力してします。その解決策や効率よく入力するようにページを工夫するはありませんか?」という内容でした。
そこで、以下のようなことがらをアドバイスしました。
①GIGAスクール構想で配備されているiPadのiPadOSが16.1.1だったので、設定アプリの一般>ジェスチャ>4本または5本指でスワイプという【マルチタスクのジェスチャ】をオフにすれば、アプリが切り替わらなくなります。
マルチタスクのジェスチャOFF
②指が震えてしまって目的の位置をうまくタップできない場合、設定アプリのアクセシビリティ>タッチ>タッチ調整で入力しやすくなるかもしれません。
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iPadOS/iOSのアクセシビリティ【タッチ調整】についてサルベージ(該当のブログ記事へ)
iPadOS14.4のタッチ調整画面
Appleの公式ページiPhone、iPad、iPod touch、Apple Watch でタッチ調整を使うからの引用
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【保持継続時間】 →画面をどれくらい押し続ければタッチとして認識されるのか、その時間の長さを指定します。
保持継続時間を 0.3 秒よりも長くすると、画面をタッチしている間、時間を表す円形のアイコン (タイマー) が表示されます。
タイマーが時間切れになると、タッチがデバイスで意図的な入力として認識されます。

【スワイプジェスチャ】
スワイプジェスチャを使うには、デバイスで「保持継続時間」と「タップ補助」を有効にしておく必要があります。
スワイプジェスチャを有効にした場合は、「保持継続時間」のタイマーが終わるのを待たずにスワイプできます。
指をどのくらい動かせばスワイプとして認識されるのか、その距離も指定できます。

【繰り返しを無視】→間違えて意図せず複数回タップしてしまっても 1 回のタップとして認識されるように選択しておけます。
数回のタッチをデバイスが 1 回と認識してくれる時間の長さを指定します。

【タップ補助】
タップ補助を使えば、スワイプジェスチャをうまくできなくても、最初に触れた位置または最後に触れた位置のどちらが意図したタップ位置なのかをデバイスが判断してくれます。
「タッチ開始位置を使用」を優先オプションとして設定した場合は、画面をタッチしてから、「タップ補助ジェスチャ開始までの時間」のタイマーが切れるまでの間、指を自由にドラッグできます。
「タッチ終了位置を使用」を有効にした場合は、画面の任意の場所をタッチしてから、タイマーが切れるまでの間に、タップ位置として認識してほしい位置まで指をドラッグします。
③本人が好きなTiny Pianoのように広告が表示されるアプリはアクセスガイドをオンにすることで広告エリアに触れても大丈夫になります。
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iOSのアクセシビリティ機能【アクセスガイド】の紹介と設定方法20190420_#0335(YouTube動画へ)

④iPadアプリを変更する時など、Sくんが答えやすいように定型化された疑問文で教員は尋ねておられましたが、コミュニケーションブックの中からページを探して答えるのは時間がかかるでしょうから、答えるためのコミュニケーションカード(例:他のアプリに変える=アプリを終わる、まだ続ける)を手元に置いておくと良いかもしれません。

⑤Sくんは興味が移りやすい側面もあるようで、画面にたくさんのあぷりがあると「どれにしようかなぁ」と悩んでしまい時間ばかり経ってしまうことがあるようです。
Sくんが使っているiPadは第7世代なのでiPadOSを17にアップデートできます。
iPadOS17には、使えるアプリを限定するこができるアクセシビリティアシスティブアクセスがありますので、それを使うようにすればアプリ選択で悩まなくなるかもしれません。
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iPadでアシスティブアクセスを設定する(Appleサポートの該当ページへ)
アシスティブアクセスを設定した画面
アシスティブアクセスを簡単に使ってみる【Lv.1】~VoiceOver完全ガイド(iOS17)~(YouTune動画へ)

DropTapのリンクを貼る方法は以下のサイトで紹介されていますので、紙のコミュニケーションブックの内容をiPadに移行化できそうだと思います。
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DropTap リンク機能(基本編)Ommyさんのnote記事へ)

⑦お風呂やプールではiPadが使えませんし、咄嗟に意思を伝えるにはローテクコミュニケーションブックの方が早い場合もあります。
したがって、「コミュニケーションブックを使うかiPadのDropTapを使うか」の二択ではなく、TPOに応じて使い分けるようにすると良いと思います。
その際、肝心なことは教員が決めるのではなく、本人が使いたい方法を選べることだと思います。

今日のところはココまで...