私の講演をお聞きになられた方はご存知かと思いますが、必ずお話しする言葉がタイトルにも書いた「障害があっても◯◯デキルという発想が大切である」という言葉です。
1989年、初めて肢体不自由養護学校に勤めた時、子どもたちは肢体不自由であるが故に◯◯デキナイということに目が向きました。
歩けない、座れない、食べられない、書けない、話せない...
ないない尽くしと評価されていた子どもたちへの当時の教育は「デキナイことをデキルようにする」ということに重きが置かれていました。
もちろん、それを否定するつもりはありませんし、デキナイことがデキルようになることは素晴らしいことです。
しかしながら、医療技術が進歩した結果、子どもたちの障害が重度・重複・多様化するようになってきて、「デキナイことをデキルようになる」前に卒業していく子どもたちが少なくありませんでした。

2007年から始まった特別支援教育では「障害による生活や学習上の困難を改善または克服すること」が、その目的と規定されました。
その実現にあたっては、2001年に世界保健機関(=WHO)が「疾病等の個人因子で障害を理解するのではなく、活動や参加への制限を障害と捉え、環境因子を工夫することによって活動や参加の制限が軽減・解消される」と提唱した国際生活機能分類(=ICF)の考え方をベースとした教育が求められます。
すなわち、
①ユニバーサルデザインの採用
②アクセシビリティの改善
③支援技術(=Assistive Technology)の活用
といった環境因子を工夫することによって、それまで困難とされていた活動や社会参加をしやすくしていこうという発想が大切だと思うのです。

Assistive Technology(なかでも、電子技術を利用したe-AT)を活用した障害者の代表格とも言えるのが、ブラックホールの研究で世界的に著名な故S・ホーキング博士ではないでしょうか。
Stephen Hawking
全身の筋力が失われていく筋萎縮性側索硬化症(=ALS)を発症したホーキング博士は、次第に歩くことや文字を書くことだけでなく、言葉を話すこともできなくなりました。
しかし、親指をほんのわずか動かすことができたので、その親指に取り付けたスイッチをON/OFFするだけで電動車椅子を使って移動し、音声合成機能のついた情報端末機器を使って講義や講演を行い、多数の論文を著述してきたのです。
残念ながら今年3月14日に他界されましたが、彼が遺した功績は誰もが認めるところだと思います。

一方、日本にもホーキング博士に負けず劣らないアクティヴな若者がいます。
株式会社仙拓の代表取締役社長を務める佐藤仙務さん(脊髄性筋萎縮症)です。
1991年生まれの佐藤さんは愛知県立港特別支援学校を卒業後、働きたくても働ける場が無いことに発奮して、ホームページ制作や名刺作成を主事業とした会社を設立・経営しておられます。
他にも、インターネットショップBIG MOTTSUを経営しておられる岡本興一さん(ALS)やパソコンソフトHeartyLadderを開発しておられる吉村隆樹さん(脳性まひ)など多くのパイオニアが私たちに示唆を与えてくれています。

それは、「障がいがあるから◯◯できない」とあきらめるのではなく、「△△という工夫やサポートがあれば◯◯デキルんだ」という発想の大切さと、その実現にはAssistive Technologyの活用が不可欠であると思っています。